【本文中のアンダーラインのところは、原文では傍点です】

 とんぼの歌        サトウ・ハチロー

  かとりとんぼは  ひぐれのとんぼ
  やなぎとんぼは  夕かたとんぼ
   行水したのか   しろいこな
   羽につけてる   かわとんぼ

  ブローチみたいな よつぼしとんぼ
  ぱァやのおびどめ ベッこうとんぼ
   さなえとんぼは  なぜだろか
   春のおわりに   とぶとんぼ
   

  とんぼの時計は  カナカナぜみか
  うたが消えれば  とんぼもいない
   みたいとりたい  あおとんぼ
   からがねとんぼに おにやんま

  どこではじまる  とんぼのお角力
  軍配とんぼに   たづねてみよか
   ほたるの夜店で  なにを賣る
   ものさしとんぼが お手傳い

  おさななじみの  むぎわらとんぼ
  これも仲よし   しおからとんぼ
   とうすみとんぼと いととんぼ
   いつもしづかに  とぶとんぼ

 これはボクのとんぼの歌です。
 日本の詩人で、これだけとんぼをよみこんだ歌を書いた人は他にないと思います。
 ボクの童謡集“叱られ坊主”の中の叱られ坊主にも、とんぼは登場して来ます。

 おはぐろとんぼだけを唄ったウタ――
 とうすみとんぼだけを唄ったウタ――
 おくるまとんぼだけを唄ったウタ――
 もボクは書きました。
 又亡父紅緑にたった一つ童謡があります
  大慈大悲の地蔵尊
  あきつ釣る子をみておわす

というのが書きだしでした。亡父紅緑は地蔵さまの縁日の日に生れたのです。
 明治七年の七月七日、・・・
 まさに夏の盛り、とんぼの季節です。だからたった一つの童謡に、あきつ(とんぼですな)がでてきたのでしよう。
 ボクのウタに、しばしばとんほがでてくるのは、矢張りこの父の血を受けついたためかも知れません。

   (昭和30年4月30日 森林商報 新41号)

【サトウ・ハチロー[本名:佐藤八郎]】
 小説家にて、俳人の佐藤紅緑(サトウ・コウロク)氏の長男。明治三十六年、東京に生る。
 詩人および童謡作家として著名であり、一面、野球評論家としても知られている。また数々のユーモア小説の作品もある。NHKラジオ「話の泉」のレギュラーとしても親しまれた。


サトウ・ハチロー:とんぼの歌   自筆原稿
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